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「インターナショナル・エクスポージャー」最新レポート(コンテンポラリーダンス /2022年12月)

イスラエルのダンスシーンを発信するフェスティバル「インターナショナル・エクスポージャー」。3年ぶりのリアル開催となったスザンヌ・デラール・センターからの最新レポート

―三上さおり(世田谷パブリックシアター)

 2022年11月30日から12月4日の5日間、テルアビブのスザンヌ・デラール・センターで、イスラエルのダンスシーンを発信するフェスティバル「インターナショナル・エクスポージャー」が開催された。いうまでもなく、イスラエルといえばダンス!そしてイスラエルダンスといえば、ここスザンヌ・デラール・センターなくしては語れない。同センターを会場に数々のアーティストを紹介してきた「エクスポージャー」は、1995年より毎年開催されてきた。現代的なダンスセンターの活動が各地で活発化し始めた時期と重なる。今回は、コロナ渦での中止・オンライン開催を経て、実に3年ぶりのリアル開催となったが、センターには、コロナ以前からの改修工事によって整備された、明るく開放的なスタジオが完成し。長らくディレクターを務めてきたヤイル・バルディ氏に代わって、アナット・フィッシャー=レヴェントン氏がセンターCEOに、ナオミ・ペルロフ氏がアーティスティックディレクターに就任し、まさに新生エクスポージャーの初船出となった。

 コロナの影響からか、アジア圏からの参加者は大幅に減っていたものの、ヨーロッパを中心とする国外から100名を超えるダンス関係者、劇場ディレクター、フェスティバルプロデューサーなどが招かれていた。イスラエルダンスの代名詞とも言えるバットシェバ舞踊団から伸び盛りの若手まで、5日間で20組を超えるアーティストの公演に加え、リニューアルされたエクスポージャーで話題を集めたのは、「PITCHING」と「1|2|3」という新しいプログラムがスタートしたことだ。

新プログラム「PITCHING」と「1|2|3」がスタート!

 「PITCHING」は、事前に選ばれた国内外のパネラーに対して、ノミネートされたアーティストが自身の企画をプレゼンするというもの。各組5分程度の限られたプレゼン時間にも関わらず、パネラーたちは、アーティストの熱心なプレゼンに共感すると、自身がディレクターを務める劇場でのレジデンスを提案したり、自国のフェスティバルへの招聘を約束するなど、想像以上の盛り上がりを見せていた。夢を語ってリターンを得るプログラムというと、かつて日本でもそんなリアリティ番組があったようなーー。こちらの方が圧倒的に和やかであることは間違いないが(笑)。 

 また、「1|2|3」は、若手ダンサーの振付能力を養うためのプロジェクトで、文字通り、参加するダンサーがそれぞれソロ作品を創作、続いて参加者同士がペアを組みデュオとして発展させ、その後トリオ作品へと展開していくというもの。このプログラムを通して、参加者たちは複数のダンサーを配した振り付けの経験値を高めていく。振り付けは感性によってのみなされるものではなく、計算され、構築されるものである。コロナ渦でソロワーク中心になりがちだったダンサーたちも、このプログラムに参加することで仲間と出会い、メンターの客観的なアドバイスや新しいメソッドに触れることが可能になるという。

 元来フェスティバルというものは、さまざまなアーティストの最新作がそろう見本市的なものと考えられる。新体制のエクスポージャーには、これら二つの多分に教育的要素の高いプログラムが組み込まれたわけだが、これは、コロナ渦以降おそらく世界的にも停滞気味な舞台芸術の次なる覚醒を、参加するゲストとともに見守り育んでいきたい、というメッセージのように受け取れた。

 新生エクスポージャーの5日間は、過去に訪れたエクスポージャーと比較すればややゆったりしたスケジュールではあったのだけれど、合間にはゲスト同士の交流が自然と進む工夫(「Wine O’clock」というワインが飲み放題!のオープンエアーサロン)もあり、5日間はあっという間だった。そして、スザンヌ・デラール・センターといえば、いつも入口で民族楽器を演奏しているストリートミュージシャンがいたよね~と他のゲストたちと話していたら、、、ほらやっぱり、今回も同じ場所で懐かしい音色が(笑)。記憶の中と寸分変らぬ佇まいに、スザンヌ・デラール・センターの歴史の重みと懐の深さのようなものを感じたのであった。



「International Exposure 2022」について

<概要>
日付・会場: 2022年11月30日~12月04日、スザンヌ・デラル・センター(テルアビブ)
参加ダンスカンパニー数: 18組
海外プレゼンター参加数: 150名
発表作品数:18公演、13組のプレゼンターを含むピッチングイベント1回、プレ・プレミア・スタジオパフォーマンス2回、ミングリングイベント2回、ライブポッドキャスト1回

「International Exposure」は、イスラエル外務省、文化・スポーツ省、テルアビブ・ヤフォ市から支援のもと、テルアビブ市にあるスザンヌ・デラール・センターが毎年行っているコンテンポラリーダンスのプラットフォームです。1995年以来、大規模なダンスカンパニーや著名な振付家から、新進の独立系、実験的なダンスアーティストまで、多様なクリエイションの発表の場を設け、劇場やフェスティバル関係者、キュレーターを世界各国から招聘し、イスラエルの幅広いダンス・コミュニティと関わる機会を提供しています。

近年「パフォーマンス」と「ピッチング」の二つのプログラムが設けられています。
新作の全編を紹介する「パフォーマンス」とは対照的に「ピッチング」では、イスラエルの振付家に海外での創造的な機会を提供することを目的としています。International Exposureに来場したフェスティバル、劇場、カンパニー、アカデミーのディレクターからなる多様な国際的パネルが、今後のプロジェクトの展開をサポートするものです。

(文責・イスラエル大使館文化部)

年配の男性人の肖像画

三上さおり

世田谷パブリックシアター劇場部勤務(企画制作担当)。国内外の個性的なダンス作品、カンパニーを紹介するとともに、若手カンパニーの活動支援、ワークショップやレクチャーの実施など、ダンスやパフォーマンス系事業を中心に携わる。
2023年度は、イスラエル出身の世界で活躍するインバル・ピント、ダニエル・アガミを招聘予定。

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