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イスラエルワインの復興

ユダヤ教とともに長い歴史をもつイスラエルワインに、近年世界的な注目が集まる。また技術の向上にともない”イスラエルらしいワイン”の模索が始まっている。

ー土田英理也(クリエーター/イスラエルワイン研究家)

皆さんはイスラエルのワインを飲んだことはありますか?

イスラエルは古代から葡萄を育て、ワインを作って来た歴史があります。
考古学的には少なくとも4000年前の葡萄園やワインプレスの跡が見つかっています。
ユダヤ教的にもワインは欠かすことの出来ないアイテムです。毎週金曜日の安息日シャバットにはワインを片手にキドゥーシュ(祝福の祈祷)を捧げてからディナーを頂きます。
このワインは神様の恵みに感謝し、安息日を聖なるものとするための象徴と言われています。
ちなみにこのキドゥーシュ用ワインはコーシェル認定の物でないといけません。コーシェル認定ワインの話は長くなりますが、シャバット遵守者によって製造されます。
そこにはさまざまな規定があり、最初の4年間は収穫や製造は禁止され、7年に一度シュナット・シュミターと言って休耕させないといけません。

近代イスラエルでもワイン産業は復活し、年々そのレベルは向上しています。
四国サイズの同国ですが、2023年現在でなんと360近いワイナリーが存在しています。
建国前1800年代にはTeperberg、CARMELと言ったワイナリーがイスラエルワインの復興を旗揚げしました。

カルメルワイナリーのスタートはドラマチックで、フランスの老舗ワイナリー、シャトーラフィットのオーナーであったエドモンド・ド・ロスチャイルド卿のサポートを受けて始まりました。
1980年代に入るとイスラエルワインを世界に知らしめたGolan Heights Wineryが生まれます。日本でもYARDEN(ヘブライ語読みでヤルデン)として有名ですね。
90年代に入ると第1次ワイナリーブームがやってきて、ガリラヤ地方、ゴラン高原にワイナリーが乱立します。理由としてイスラエル北部には理想的気候とブドウ栽培に適したテロワールがあったからです。

2000年以降は更に小さなワイナリーがイスラエル全土に増え群雄割拠。
イスラエルの経済成長とともに国民の嗜好品に対する出費も増え、国内ワインへの期待と評価も上がってきました。
特にこの10年はワイン評論家のロバート・パーカー氏にも注目され、国際コンテストで高得点を連発、金賞受賞など実績も上がっています。
最近の取り組みとしてイスラエルらしいワインの創造が模索されています。その1つが古代イスラエルのブドウ品種から作るワインがあります。古代の土着ブドウの研究をしているアリエル大学のシビ教授によると150種くらいはあったそうです。

日本では知られていないお薦めワイナリー

Gizo
ジュディアンヒルズの西寄りに位置するワイナリー。収穫を手伝って4年目。
ヨアブさんは口数少ない頑固系ぶどう生産者。良いワインを作るために良いブドウしか取らないワインメーカー。イスラエルでも知名度は低いがボディがしっかりした骨太の赤ワインを作っています。

Feldstein Winery
アヴィ・フェルドシュタイン氏、イスラエルワインを語るうえでこの人抜きではあり得ないと思っています。Segal、BARKANのチーフワインメーカーとしてイスラエルワインの品質向上、unfiltered考案したパイオニア。また評価の低かったイスラエル品種アルガマンを使い、信じられないワインを生み出し世界でも高い評価を得ています。イスラエルワインとは?を模索する、ちょい悪なカッコいいワインメーカーです。

Kerem Barak Winery
ここは筆者の友人のワイナリーです。子供達が保育園から中学校までの同じと言う間柄。
もう5年近く葡萄の収穫も手伝わせてもらってます。
数十年前にご長男を亡くし、それを機に醸造学をイスラエル北部のテルハイ大で学ぶ。ワイナリーの名前は亡き長男バラク君からとっています。小さいながら良いワインを作ると評判。特に3年前からリリースしてるPetNatはポップなラベルと飲みやすいお洒落な口当たりで評価が高いです。若者に人気のワイナリー。

SPHERA
白ワインしか作らないワイナリー。
イスラエルの気候は暑く、いつも赤ワインと言う気分になれない人も多いです。スフェラはかたくなに白の力を信じ、最高の白ワインを作り続けています。

皆さんもぜひ、イスラエルのワインをお楽しみください。

年配の男性人の肖像画

土田英理也(クリエーター/イスラエルワイン研究家)Eliya Tsuchida

国立ベツァレエル美術デザイン・アカデミー卒(ビジュアルコミュニケーション科)。帰国後日本のゲーム開発会社を経てイスラエルに戻り、モーションゲームVR・ARの開発会社で最新技術を使った開発に携わる。一方イスラエル在住日本人とイスラエル人との交流会を主催。長い在住歴ゆえイスラエル国内の日本人コミュニティでの知名度は高く、歴史宗教にも精通。日本からイスラエルへのメディア取材の窓口でもある。夫人もイラストレーターとして活躍中。

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